みんな欲しがる800点
エイゴドーラク編集長です😎
レビューを書きたいテキストは山ほどあるのですが、いかんせん身体が1つなもので歯痒いわ! でもレビューはしっかり学習者の役に立つように書きたいから、時間をかけることは厭いません・・・すべては英語学習者のため!
さて、今回のレビューは『公式TOEIC Listening&Reading 800+』です。
こちら2021年12月に発売されたテキストです。800点という具体的な目標スコアをタイトルに含めた”初の”公式教材だったため、TOEIC界隈では話題になりました。
800点って相当に高いハードルだと思います。が、それにもかかわらず、楽天のような大企業が社員にTOEIC800点取得を義務づけていることは有名で、国際的にビジネスを展開している企業ほどTOEIC800点レベルの英語力を持った社員をなるべく多く確保しておきたいところなのでしょう。知らんけど。
私の勝手な推測はさておき、TOEIC800点を持っていると評価されるのは間違いありません。海外赴任の基準になったり、国際系の部署への異動条件や、昇進の条件にもなったりします。私だって社会人の端くれですから、そのくらいのことは分かります。
そんなTOEIC800点にピンポイントで照準を当てたテキストを公式から発売するとは、一般財団法人IIBCさんも隅に置けませんね。消費者が欲しがるものを心得ていらっしゃる。
IIBCってたまに公式問題集のスピンオフみたいなテキストを出しますが、これまでの経験上、アタリだったものは少ない印象です。誰に作らせているんだか分からないけど、「余計なことをしている」テキストであることが多かった。大人しく公式問題集だけ作っていればいいものを。
とはいえ今回の『公式TOEIC Listening&Reading 800+』も中身を見てみないことには評価できませんから、私がしっかりと時間をかけて使い倒してみましたよ😎
学習者のお役に立てるよう正直にレビューしていきますので、ぜひご覧いただき、参考にしていただけると嬉しいです✨ それではスタート!
ズバリ! これで800点は取れるの?
このテキストで800点は可能ではある
例えば現スコアが700点だとして、このテキストで800点まで伸ばせるかというと、それは可能であると思います。ただ、そこには単語集や文法問題集も併用していることが前提となります。この1冊”だけ”だと難しいかもしれません。
また、テキストのレベル的にTOEIC700点くらいの実力は持っていたほうがいいかと思います。それ以下(例えば600~670点くらい)だと、ほかのテキストを使って基礎固めをするのが先です。『800+』を使うのはコンスタントに700点以上が取れるようになってからにしましょう。
収録問題数はけっこう豊富
『800+』には450問以上が収録されています。公式問題集よりも問題数が多く、難しめの問題に焦点を当てているため、量的には十分だと思います。
別冊付録として単語集
テキスト内に出てきたレベル高めの単語を集めた別冊付録がついています。
単語のまとめって自分でやると面倒くさいから、付録にしてくれているのは嬉しいです。和訳を隠せば単語テストもできるところもグッドです。
この付録はしっかり活用しよう!
テキストは3部構成
Section1:パート別 難問の傾向
問題パターンの解説があります。いちおう申し訳程度に問題もありますが、どちらかというと例題みたいで、けっこう流して読んでしまいそう。あと各パートの問題形式にも紙幅が割かれていますけど、これは不要ですね。だって800点を目指す人が「パート1は6問あります」なんて情報をもらって喜ぶわけないですからね。完全にスペースの無駄使い。難問の傾向についての解説が薄っぺらいから、そっちを充実させてくれと思いました。こんなSectionに30ページも使うなんてアホですよ。だったら問題数を増やしてくれ!
Section2:難問100選 演習
このテキストの目玉と言えるSectionです。リスニングが82問、リーディングが156問あって、そのうちの100問が難問として認定されています。また、いろいろなタイプごとの難問が解けるのも高評価のポイントです。
リスニングは解いて丸つけをしたあと、スクリプトを読んで音読をしましょう。スラスラ読めるようになったらオーバーラッピングやシャドーイングでスピード慣れしつつ、受信した音声情報の処理速度を上げていきましょう。パート3,4は量が多いので、しっかり復習しようとすると時間が相当かかります。でも、そのくらいやらないと800点は無理です。
リーディングは、リスニングよりも入念に復習したほうがいいです。素材が優れていますから、ちゃんと勉強すれば実力がアップします。問題をすべて自分で解説できるようになるのが理想ですね。なかなかそこまでやれる人は少ないと思いますが、復習が甘かったり雑だったりするのはスコアが上がらない人の特徴です。やるなら徹底的にやりましょう。まあ、復習しなくても800点が取れるくらい頭の良さに自信があるなら話は別ですけどね。
Section3:本番形式テスト 200問
最後に模試1回分です。詳細な難易度は後述しますが、全体的にそこまで難しくありません。ちょっと問題が古いので、できれば最新の公式問題集も使ったほうがいいです。
あと細かいことですが、解答は別冊にしてほしかった・・・
それからCDが変なところに挟んであるのも意味不明。
こういうところなんだぞ、IIBCさんよお! ユーザーのことを考えて作ってくれよな!
・700点以上の人にオススメ! ちゃんと800点が目指せる!
・収録問題はちょっと古いが、量は豊富!
・Section2の難問100選が使える! ここで勉強しよう!
・別冊の単語集も効果的! ちゃんと使おう!
本番形式テストの難易度調査
難しいと感じたのはNo.1と5です。どちらも単語が分かれば問題ありませんが、No.5のほうは「正解がない!?」と思う方もいるのではないでしょうか。なんてことない単語のはずなんですが、浮かんだイメージ次第では難問となります。あとの4問はどれも基本的なレベルでした。あと早口のイギリス女性ナレーターがいませんでした。あの人がいるから難しくなっている部分があるのに、作成者はその辺が分かっていませんね!
800点のためには5問正解以上がざっくりとした目安になるかと思います。
簡単レベルが10問(7~15, 26)、標準レベルが10問(16~18, 21~23, 25~27, 30, 31)、難しいレベルが5問(19, 20, 24, 28, 29)という内訳とみました。難しい問題はいかにもパート2のひねくれた問題という感じで面白かったです。実生活だったらイヤな奴と思われるような返答なのに、パート2ではそれが正解の応答として採用されます。全体的にはそこまで難しくないので、ちゃんと稼がないといけないレベルです。
800点のためには22問正解以上がざっくりとした目安になるかと思います。
キーワードを拾えば解ける問題が28問(32~40, 42~48, 50~53, 55, 56, 58, 60, 62, 65, 67, 68, 69)、それ以外はキーワードの言い換えがされいたり内容理解が必要だったりする問題です。ナレーターの言っている単語が拾えれば解ける問題が7割以上もあるというのは最近の公開テストでは珍しいことです。最新の『公式問題集9』ですらここまで多くはありません。やはりひと昔前の問題を使っているので、難易度に明らかな差が出ています。このパート3はかなり簡単ですので、あまりミスは許されません。
800点のためには36問正解以上がざっくりとした目安になるかと思います。
キーワードを拾えば解ける問題が20問(71~76, 79~81, 84, 86~88, 91~93, 95, 97, 98, 100)、それ以外はキーワードの言い換えがされていたり内容理解が必要な問題でした。キーワードで解けるものが7割近くあるのは、やはり最近の公開テストと比較しても多いです。よって、このパート4は解きやすいレベルであると言えます。No.85、94、99の3つは難しい問題でした。
800点のためには26問正解以上がざっくりとした目安になるかと思います。
文法問題19問、語彙問題11問
品詞問題は8問(105, 107, 109, 111, 113, 115, 119, 127)で、難易度は標準です。No.115はかなり難しく上級者レベルです。No.127は選択肢が難しいですが品詞を考えれば何てことありません。『公式8』や『公式9』のパート5のほうが難しいと思います。
動詞問題は2問(103, 129)で難易度はやや難しいです。No.103は超基本レベルで、No.129は難しいです。解説はそこまで親切ではないので、独学の人は分かったふりをせずに納得できるまで追究しましょう。
前置詞・接続詞系は6問(110, 114, 117, 123, 126, 128)で、難易度は標準です。800点を取りたいのであれば全問正解しないといけません。選択肢が分かっているだけでなく、文意がつかめていることも要求されます。
代名詞系は2問(101, 121)で、難易度はやや難しいです。No.101は超基本レベル、No.121が難しめでした。No.121は文意がつかめれば簡単に感じるかもしれません。結局、読めれば解けるんです。
比較問題は1問(125)で、難易度は難しめです。比較問題がそもそも稀にしか出ないのですが、出題されるとたいてい難しいです。No.125には上級者が知らないといけないポイントが含まれています。
語彙問題は11問(102, 104, 106, 108, 112, 116, 118, 120, 122, 124, 130)で、難易度はやや難しめですが、800点を取るのであれば難しさを感じてほしくないレベルです。No.106、118、130が難しめで実力が試されます。それ以外は余裕で正解しないと800点はきついです。
800点のためには24問正解以上がざっくりとした目安になるかと思います。
文法問題は7問(131, 134, 135, 136, 140, 143、146)で、難易度は簡単です。品詞問題が2問、動詞問題が3問、代名詞問題が2問という内訳で、No.143でひっかかる人がいるかもしれないくらいで、残りはいたって普通の問題です。800点のためには1ミス以内に抑えたいですね。
語彙問題は5問(133, 137, 139, 141, 144)で、難易度は標準です。No.139と143は文脈に合った副詞を選ぶ問題ですが、どちらも簡単です。というか簡単に感じないといけない。それ以外の問題もとくに難しいところはありません。
文挿入問題は4問(132, 138, 142, 145)で、難易度はちょっと難しめです。No.132と145がすこし難しいかと。それ以外は簡単です。
800点のためには14問正解以上がざっくりとした目安になるかと思います。
シングルパッセージは標準レベルです。レベル・文章量ともにフツーの問題です。800点を取るのであれば30分くらいで解き切って23以上正解したいところでしょうか。個人的にはNo.153、168、172が難しめに感じました。
マルティプルパッセージはちょっと難しめでした。根拠がはっきりしなくて自信が持てないと思わせるような問題がいくつかありました。とくにNo.180 、187、196は難しめだったと感じましたね。なかなか骨のある問題で、いい練習になるのではないでしょうか。30分くらいで解ききれたら上出来かと思います。正解数は20以上は欲しいですね。
この模試はパート5,6が解きやすかったので、その2パートを20分くらいで解いて、残り55分をパート7に充てられるのが理想かなと思います。あくまで理想ですから、参考程度に考えてください。正解数としては全体で75~80に届けば良いかと思います。こちらも参考までに。
総合評価
★★★☆☆(60点)|800点を目指すならアリ!
TOEIC800点が取れるのは受験者の上位15~17%です。100人いたら15~17人は800点が取れることになりますね。
ちなみに700点だと上位30~35%になり、800点を取れる人のちょうど2倍くらいになります。やっぱりTOEIC800点というは、ちゃんと勉強しないと到達できない領域です。
800点を目指すとき、ハイレベルなテキストを使ったほうがいいのではないかと考える学習者は多いと思いますが、その必要はありません。公式問題集レベルの英語がちゃんと理解できれば800点でも900点でも取れますから、背伸びして難しい問題をやらなくても大丈夫です。
今回紹介した『800+』にしても、確かに難しい問題が多めに収録されていますが、市販のハイレベル問題集と比べれば解きやすく正統派です。公式ではない市販のハイレベル問題集はわざとらしく、時に意地悪に難しくしていますから、安易に手を出さないほうが無難なのです。
したがって『800+』は文字通りTOEIC800点を目指す人にとっては「ちょうどいい」問題集になります。公式教材ですから、問題の質にも信頼が置けます。
それでも総合評価を60点にしたのは、問題がちょっと古いのと、使いにくい点があるからです。解答は別冊にしてほしいし、CDも変なところに付けないでほしい。
それから個人的に最大のマイナスポイントだったのは、今は登場しないオーストラリア人のナレーターが出ていること。公式問題集でいったら「3」までしか登場しないナレーターだぞ。せめて2021年や2022年のテストでも現役のナレーターが読んでいる問題を収録してくれよ!
公式教材だからモノが良いのは確かなんだけど、パーフェクトではないのよ・・・
問題選定はちゃんとした人がやればもっと良くなるはず! もうちょっと頑張ってくれよな、IIBCさん!
というわけで至らない点もちょっとありますが、800点という目標を考えるのであれば使ってもOKなテキストだと思います。
公式問題集には適わないけど、市販のハイレベル問題集よりはずっといいぞ!
というわけで今回のレビュー記事はここまでになります。テキスト選びの参考になれば幸いです。
編集長にレビューしてほしいテキストがあったら、Twitter(https://twitter.com/eigodoraku)でコメントください!