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【レビュー記事】八島式 TOEIC L&R テストの英語が読めるようになる本

リーディング上級者への入門書

こんにちは! エイゴドーラク編集長のもこです。

今回紹介するのは『八島式 TOEIC L&R テストの英語が読めるようになる本』です。タイトルがそのまんまで分かりやすい!

この本の発売は2022年2月です。

内容はパート7(読解問題)対策用となっており、対象レベルはTOEIC730点以上と書かれています。

TOEICの平均点が620点前後ですから、730点以上が対象となると、わりとレベル高めのテキストであることが分かります。

実際に私が使ってみて感じたのは、「リーディング上級者への入門書」ということでした。

言い換えるならば、パート7が読めている人の感覚を知ることができる本です。どこを注意して読んでいるのか、どのようにして答えを見つけているのか-そうした読解のポイントが詳しく解説されているテキストだと思います。

TOEIC990点を取得している私が読んでも、「確かにそこを意識して読んでいるなあ」と気づかされることが多々ありました。パート7が読めている人って、けっこう無意識にポイントを把握して正解を見つけているから、どうやって答えを探しているのかを言語化するのって難しいんですよね。

自分がこんなにもたくさんの読解ポイントを知らず知らずのうちに掴んでいたのだということが分かって、本当に面白かったです。

逆を返せば、これからリーディング上級者の仲間入りを果たしたいと考えている人にとっては、パート7対策を確実に進めていくうえでの羅針盤となりますので、心強い味方になってくれること間違いなしです。

なんとなくパート7を読んでいて、なんとなく7割くらい正解できてしまっている方は、ぜひ使ってみてほしいと思います。

対象レベルは730点以上とあるが……

さて、対象レベルは730点以上とありますが、個人的にはここには注釈を入れたいです。

730点というのはリスニング・リーディング合計でのスコアとなります。

極端な話になりますが、リスニング450点・リーディング280点でも730点に届きます。ただ、リーディング300点前後の人がどのくらい英語を読めているかというと、私がこれまでTOEICレッスンなどで見てきた感じからすれば、「残念ながら理解度は低い」と言わざるを得ません。パート7で言えば、40~60%の正解率(あるいは理解度)ではないでしょうか。

このテキストの問題レベル的に、向いているのはリーディングで350点くらい取得していて、これから400~450点を達成したい人だと思います。

まず解説文で文法用語が使われていますので、その理解が前提となります。関係代名詞と関係副詞の仕組み、それらの制限用法・非制限用法、接続副詞の使い方などを知っていたほうが快適に勉強できます。

これらの文法を知らなかったり、自信がない場合はチャンスですので、これを機に勉強してみてください。決して文法が分かっていないからといって、この本を敬遠しないでほしいです。上級者を目指すのであれば、そのくらいのことで挫けてはいけません。

また、読解問題のほうは、やや難しめに設定されています。難易度の感覚はとても個人的なものなので、実際に読んでみて、手を出しても大丈夫そうか確認したほうがいいです。せっかく買ったのに、ちょっとだけ使って挫折してしまった……というのが一番悲しいですからね。買った人にとっても、テキストにとっても。

先ほどリーディングで350点くらいは取得しているべきと書きましたが、その点数に到達していなくても、このテキストで勉強することは可能です。要は、やる気次第というわけです。

私としては、リーディングで350点くらい取れている人なら、挫折することなくテキストを最後までやり切って、スコアアップに結び付けられると考えているだけのことです。

この本のいいところ

読解のヒントが満載

多くの人が抱えるリーディングの欠点をふんだんに盛り込んでいるのが何よりも素晴らしいです。著者はTOEICのセミナーを開催しており、そこに集まった人が問題を解くのを見るうちに発見した弱点やつまずきポイントを集めたのが、このテキストなのだそうです。

そのため、テキストのいたるところに読解のヒントとなる言葉が散りばめられています。ここでは、そのうちのいくつかを引用させていただきます。

パート7は難関パートと言われていますが、本文中に書かれている正解根拠を特定することができれば必ず正解にたどり着くことができるのです。

八島式 TOEIC L&R テストの英語が読めるようになる本 p.3

これはパート7を解くうえでの最優先事項です。TOEIC990点を取得している私がパート7を解く際になにを一番大事にしているかというと、正解の根拠なのです。おそらく、高得点者でこれを意識していない人はいないでしょう。

裏を返せば、スコアがなかなか伸びない人は、何となくで解いてしまっている人が多いと思います。100%の確信をもって選べていないうちは、不正解も同然だと思ったほうがいいでしょう。

もう1つ紹介させてください。

実際に私のTOEICリーディング講座で検証してみると、多くの受講者はぶつ切りのように読んでしまっているため、文脈が理解できていませんでした。文脈を終えていれば正解を選ぶのは簡単ですが、あいまいにして読み進めてしまうと、設問を読んでから再度本文を読み返して、時間を浪費してしまいます。英文を読める人と読めない人の差は、このようにして生まれてしまうのです。

八島式 TOEIC L&R テストの英語が読めるようになる本 p.94

これはまさに中上級者の弱点です。理解がぶつ切りになりがちなのです。

文と文がつながって文章が完成していますから、つながりが分からなければ、全体像も分からないということになります。どういうわけか、1文読んで理解したと思ったら、次の文を読み終わる頃には前の文の内容を忘れてしまうということが起こるのです。

私の経験上、これは英語を読みなれていないことに起因しています。日本語だったら文脈がつかめるのに、英語になると分からなくなる人は、なおさら当てはまります。

解消するには、文脈を意識しながらたくさん読むしかありません。2~3文、あるいは1パラグラフを読み終えたときに、それまでの内容を総括してみるといいです。要約が言えるなら文脈は追えています。

もし日本語でも文脈を意識する習慣がない場合は、そこから改善したほうがいいです。母国語でできないことは、外国語でできるわけがありませんからね。

文法・論理・情報処理の方法 3つの観点から読解力を鍛えられる


テキストは2部構成です。

Chapter1は文法・語法・論理をヒントに読み解くのがテーマで、Chapter2は情報処理の方法をテーマにしています。

リーディング力を上げてくれるのはChapter1のほうです。リーディング上級者が、英文のどんなところに気をつけて読んでいるのかが勉強できます。

特に、時制とディスコースマーカー(なんだそれ? と思った方は、このテキストをチェックです)がテーマのところは、非常にいい訓練が積めるなと感心してしまいました。

p.53では時制だけを意識して読むトレーニングが効果的であると紹介されていますが、これには100%同意です。私も英文を読んでいるときに、「あれ、時制の関係はどうなっているんだっけ?」と分からなくなったときは、時制にだけ注意を向けながら読み返します。

TOEICのリーディングで高得点が取れる人でも読み返すときは当然あります。しかし、何となく読み返しているわけではありません。ちゃんとテーマを設けて読み返しているというのがポイントです。「人物関係を確認しよう」とか「時系列を見ておこう」とか、目的があって読み返すのです。そして、そうやって何度か読み返す経験をするうちに、次は読み返さないように気をつけようという意識が芽生え、より精密な読解力が養われていきます。

このテキストで教わる読み方は、なにもTOEICにしか通用しないものなんかじゃありません。英字新聞、雑誌、ビジネスメールなど、あらゆる文章を読む際に使えるスキルなのです。まさにタイトル通り「英語が読めるようになる本」なわけです。

Chapter2のほうではTOEICに特化したテクニックが学べます。誤解しないでほしいのは、テクニックを覚えればスラスラ読めるかというと、そうではないということです。ここで教わるテクニックは、答えを見つけやすくするためのものです。正しく読めているという前提のうえに成り立ちますので、まずは読めるようになりましょう。

リーディングで満点を目指している人にも効果的なテキストです。しっかり勉強して、ワンランク上の読解力を手に入れてください!

コンパクトにまとまっている

全15レッスンで構成されており、1日1レッスンで進めても2週間ほどで最後まで行けます。

もちろん1周やって終わりにするのはもったいないので、さらにもう1周やったとしても30日。つまり1ヵ月で2周できるというキリの良さが魅力です。

1レッスンは20~30分でできるくらいの分量なので、さほど重たくありません。精読したり音読を入れたりすると時間はもうちょっと必要になりますが、問題を解きながらポイントを押さえるだけならば、比較的短時間で勉強できます。

こういうコンパクトなテキストは忙しい人に重宝されます。

悪いところはあるのか?

強いて注文をつけさせてもらうならば、あまり良くない問題が数問あったことです。

Lesson4の練習問題のNo.1と、Lesson8の例題のNo.2は、解答根拠がちょっと曖昧だという印象を受けました。TOEICの公開テストでも、根拠がひどく曖昧な問題がごくまれに出ますが、そういう問題をあえて自習用テキストに入れる必要はないのではないかと思った次第です。

個人的に気になったのはそのくらいでしょうか。

やっぱり全体的には非常に完成度の高いテキストだと思います。

リーディングのレベルを上げたい方は、間違いなく買いでしょう!

総合評価

『八島式 TOEIC L&R テストの英語が読めるようになる本』の総評

★★★★★(満点):上級者への指南書!

TOEICのリーディングで400点突破を目指したいのであれば、使って損はないです。

もちろんリーディング高得点のためには語彙力や文法知識なども必要になりますが、読解練習にフォーカスを当てれば素晴らしい良書です。

語彙力や文法に不安を感じているのなら、それ用のテキストを使ったほうがいいです。今回のテキストは、「なんとなくで読んでしまっている」という悩みを持った人が対象となっています。

リーディング上級者の目の付け所が知りたい! そう思ったら、ぜひこのテキストで勉強してみてください。英文のどんなところに注意を払って読んでいるのかを体感しながら学べます。

このテキストで上級者の感覚を身に着けたら、あとはパート7の問題をたくさん解いていきましょう。学んだことを実戦で試し、自分なりの読解術を作っていってください。

今回の記事が、テキスト選びの参考になれば幸いです。気になった方は、ぜひ書店で実物をご覧ください。それでは最後までご覧いただき、ありがとうございました😎